
アメリカのレストランでは、各テーブルにホールの担当者がついて、その人にオーダーするのが一般的です。そしてお会計の際に、その人に食事代の15~20%のチップを払うのがマナーです。
ある日レストランで食事をしていて、ふと思いました。
もし本当にチップを全てホール担当者が受け取っているとしたら、ものすごいバイト代になるんじゃないだろうか?
例えば3人で簡単な食事をした場合、100ドル(約11,000円)くらいはすぐにいきます。お酒も飲むような場合は、200ドル以上は普通です。そうすると、20%のチップということは、40ドルになります。食事の時間は2時間程度と考えると、一時間あたり20ドルになります。
しかも、ホール担当者は一度に複数のテーブルを見ます。実際、自分のテーブルに来るのは、オーダー、食事や飲み物のサーブ、会計など、2時間のうち合計で5分くらいのものです。
例えば3つのテーブルに同時についていたとすると、チップだけで1時間あたり60ドル(約6,600円)もの報酬が得られるわけです。
これに対する説明として、日本でよく言われているのは、ホール担当者はとても時給が安いため、チップで稼ぐ必要があるというものです。
しかし、この説明についても、いくつかレストランに行くうちに疑問を感じるようになりました。もしも、その説明が正しいのなら、メニュー表に載っている食事代にはホールの人件費は含まれていないということになり、その分安くなっているはずだからです。しかしちょっとしたハンバーガーやサンドイッチのセットでも10ドルを超えることは普通で、全然安いようには感じませんでした。
そこで、「レストランで支払ったチップは、全てホール担当者に渡されるのか?」ということを調べてみました。
アメリカのワーカーの賃金体系
チップを支払われる人々は、いわゆる時間給で働く作業者、一般にはブルーワーカー、最近はエセンシャルワーカーなどと呼ばれたりする仕事に属していると思います。そういった作業者の賃金体系を調べることで、チップがどのように渡されているのかが分かります。
調べてみたところ、日本にもある最低賃金の考え方に近く、そこにチップが加わってくるという感じのようです。さらにアメリカの場合は、州によって最低賃金やチップの制度も違うのが特徴です。
主な州・地域の賃金体系を下の表にまとめてみました。(単位は時給)
日本人が多く訪れる州や地域を例として載せました。
給料+チップ 最低賃金 ① | チップを給料から 差し引く限度額 ② | 給料 最低支払額 ①-② | |
---|---|---|---|
Federal(合衆国連邦) | $7.25 | $5.12 | $2.13 |
California | $14~15 | 差し引けない | $14~15 |
New York City | $15 | $5 | $10 |
Hawaii | $10.10 | $0.75 | $9.35 |
Guam | $8.75 | 差し引けない | $8.75 |
Federalというのは、いわゆる国が定める最低賃金です。各州や地域で法律を定める時に、下回ることができない最低ラインと理解したらよさそうです。Federalと全く同じ最低賃金を採用している州もありますが、それを下回ることはありません。
Federalの制度では、最低時給が$7.25を確保されている限り、店側は$5.12を上限として、時給からチップ分を差し引くことが認められています。これは驚きですね。つまりホール担当者に支払ったチップの一部は、店側に徴収されてしまうことになります。
一方で、多くの州では最低賃金はFederalより高く設定されています。さらにCaliforniaやGuamなどは、店側がチップを給料から差し引くことができない、つまり店員は給料+チップを満額もらえるということになります。このような観光資源があったり、経済が強い州は、賃金を上げさせて物価を上げるといったコントロールがなされていることが分かります。
結論
「レストランで支払ったチップは、全てホール担当者に渡されるのか?」という疑問に対する答えとしては、州によっては全て渡される場合もあるが、多くの州では一部は店のものになるということでした。
時給がタダに近いからチップで稼ぐ必要があるという噂は、チップ差し引き後の時給がとても安いことから来たのかもしれませんね。でも、少なくとも最低賃金は保証されるというのが真相でした。
なんにしても、レストランのチップ、高いんですよね。。。なんで運んでくるだけなのに、こんなに払わないといけないのかと、日本人的には思ってしまいますが。
最後はまさかの愚痴になりました。。。
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