若手ビジネスマンが海外駐在を目指す場合、どのような職種が最も可能性が高いと思いますか?
そう聞かれた場合、筆者は「経理」と答えます。
今回は、なぜそう思うかについて、書いていきたいと思います。
各拠点に経理が必要
海外駐在のスタイルとして最も一般的なものは、日系企業から現地法人へ出向赴任し、現地従業員を指導したり、あるいは日本の親会社との情報共有を行ったり、といったものだと思います。
大会社では、アメリカやヨーロッパにいくつもの事業会社を持つことが多いですが、この場合大抵の拠点にそれぞれ経理が出向配置されます。なぜなら、現地会社の事業・財務状態を正確に把握し、親会社に報告してくれる存在が必要だからです。
「現地の経理担当者でもできるんじゃないの?」そう思われるかもしれません。決まった形での報告や問い合わせへの対応程度なら可能かもしれません。ただそれだけでは機能しないことがあります。
もしも現地会社のトップや管理職が不正会計を行っていたら、、、そこまででなくても事業リスクなど不都合な事実を隠していたら、、、現地の従業員はわざわざそれを親会社へ報告することはしないでしょう。なぜなら大抵の場合、その担当者はそれを報告する義務はないから。むしろそのようなことをして、仕事を失うリスクを怖がるでしょう。
そのために、現地の事業状態を把握し、親会社の目線で評価できる経理人材が必要なのです。
上の理由以外にも、現地従業員が英語以外の言語を使用する場合や、文化の違いなどから、情報を得るのも現地での人間関係が重要になる場合など、親会社と直接のやりとりが難しい場合、より現地駐在者が重要になります。
この現地拠点に経理が必要というのは、製造業・サービス業とも基本的には変わらないと思います。
これが一つ目の理由です。
職務別 海外駐在者データ
「経理は各拠点に必要だから駐在者も多いはず」という仮説を裏付けるデータがあります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2008年(ちょっと古いですが…)に公表している調査結果に、海外派遣勤務者の主な職務別データが掲載されています。
下の表から、勤務地域によって差はありますが、ほとんどの地域において「経理」は「全社的管理」「営業」に次ぐ比率になっていることが読み取れます。
全社的管理とは、現地会社の社長や役員に就くことを指し、若手の海外駐在という条件からは外れます。
その証拠に、年齢別にみると、30-34歳では営業27%に次いで、経理は20%と2番目に多いことが見て取れます。
その次に多いのが「技術」ですが、これは製造業のエンジニアが現地プロジェクトの設計を行う、または現地従業員へ技術指導を行う等があたるかと思います。こういった方々は状況にマッチした技術を既に持っているから行くのであって、海外に行きたいがどうすればという方には当てはまらないと思います。

海外駐在を巡る社内競争の激しさ
上のデータから、「営業の方が海外派遣者の比率が多いのだから、営業の方が可能性が高いのではないか」という指摘があるかもしれません。
しかし単純に派遣者の数だけを見ても、正しい判断ができません。仮に派遣者が多くても、候補者がもっと多ければ、海外駐在を勝ち取るための倍率が高くなるからです。
ここからは筆者の経験則になりますが、日系であっても大企業ともなれば、英語を話せて海外志向の高い営業人材はたくさんいます。海外営業であれば、同じ部署にいる人は全員英語ができるはずので、その中で勝ち抜くのは大変です。
一方で経理人材では、大企業であっても比較的少ないです。そもそも海外駐在の希望者も少なめな印象です。ですので、自己研鑽で英語を頑張って、海外駐在を希望し続ければ、もし学生時代に海外経験などがなくても、選んでもらえる可能性は比較的高いと思います。
かなり個人的な経験則が入っていますが、経理能力もグローバルに使用できる専門知識ですので、英語や海外での仕事と親和性が高いと思っています。
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